伝伝即飽

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【短文作品】不正ログインの恐ろしさ

 私は自身の創作物に関する『ネタ』をメモするとき、必ず使用するツールがある。それは、フリーメールの「下書き」機能だ。アプリなどのメモも便利ではあるが、フリーメールであれば、インターネットが接続できる環境なら、スマホでもパソコンでも、どの端末からでもアクセスができ、さらにメールサービスが終了しない限り、「いつ」そのメモを残したかの「記録」としても利用できる。私がこの使い方をしはじめてから、最古の「メモ」の日付を見ると、2006年とあるので、かれこれ14年もこの使い方をしているということになる。

 さて、ところで近年、この「ネット時代」においてあらゆる事柄が進化を遂げてきたと聞く。それは、犯罪においても例にもれず、彼らも巧妙な手口で人を騙してお金を得ろうとするようだ。以前、同僚も若い頃にいわゆる「迷惑メール」「スパムメール」によってお金を騙し取られてしまったとこぼしていた。
 また、別のところでは「アカウント認証」を突破して、「乗っ取り」なる被害に遭うケースもあるという。到底、その人が行うとは思えない発言や行動が勝手にSNSなどに投稿されるというのだが、果たしてそれは本当に「乗っ取り」であるのか、はたまた本人が別のアカウント(裏アカウント)と間違えて投稿してしまったのかは定かではないが、たびたびそういった事件が各所で散見されるようになって久しい。
 インターネットは、便利であるがゆえに、その使い方や「他者へ対する言動」を気をつけないと、私生活においてもトラブルを生み出すこともあるのだ。また、「インターネット上の情報はすべてが正しい」という思い込みは、何よりも危険な思想であると理解しなかった結果、自身が「加害者」となるケースもある。常より「自分だけが被害者」と強く信じることは、時に他者のヘイト(不信感)などを買うことにもなるので、そのあたりも注意するべきかもしれない。

 日課となりつつある創作物のメモであるが、私はあるとき、その「下書き」フォルダを見て気付いた。私は大抵、下書きに創作物のメモを取るとき、きちんと「件名」にどういったメモであるのかを書き出すようにしているのだが、数日前に作成されたその「下書き」には、件名が付いていなかった。
 しかしこれは珍しいことではない。私が使用するフリーメールは、「新規作成」を行って一定時間経過すると、自動で「下書き」のフォルダにそのメールの下書きを保存するという便利な機能が付いているから。中身を完成させて「下書き」保存すると、最新の状態で保存されるのが常だが、たまに例外的に「中身を更新する前の状態」でも下書きされることがあるので、今回もそれであろうと思いながら、下書きの中身を確認した。

 ーー身に覚えのないURLが記載されている。そして、本文はそのURLだけで終わっていた。

 無論、自分ではそのメモを残した記憶はない。URLの文字列にも身に覚えがなく、けれどこれも、別段不思議とも思わなかった。なにせ私は創作物のメモ以外にも、気になった事柄などはコピペして下書きに貼り付けるという癖がある。いつもであれば、そういったときも件名を書き換えるものだが、まれに件名もなくURLだけを記載して下書きへ保管するということもある。
 ただ、いまここに表示されているURLは、本当に身に覚えがなかった。下書きが保存された日付と時刻を見ると、どうやら週末、明け方の時間帯に作成されたものということも分かった。週末はともかく、「明け方」。私は、この時点でやっと少し焦りを覚える。私はこの日、この時間帯は確実に寝ていたはずだ。まさか寝ぼけて操作したわけでもあるまい。

 気持ちの悪さを感じながら、その下書きを「ゴミ箱」へと移し、さらに念のため、フリーメールのログインパスワードも変更する。まさか、第三者による不正ログインだとしても、わざわざ「新規作成」をして「URLを残す」なんて意味の分からないことはしないだろう。そして、まさかとは思うが、私がこれまで書き溜めてきた「創作物のネタ帳」を見られた可能性もあるのだろうか。不正ログインそのものより、ネタ帳を見られるほうが何億倍も恐ろしいと感じた。

 それからしばらくは何事もなく、2ヶ月も経つと不正ログイン疑惑の恐怖も薄らいでいた。日課の創作物メモも、日に日に数十件と増え、現時点で1000件を超えている。残念なことに、このほとんどのメモは活かされることなく文字通り「お蔵入り」状態ではあるが、私の傾向的に過去夢想したネタは時間が経てば再び別の形で使い道ができることも多いので、日の目を見るその日までは眠っていてもらうことにする。

 その日、私はいつものようにフリーメールへログインした。
 下書きや未読メールがあれば、トップページの各フォルダにその件数が表示される仕組みになっている。
 のだが、

 

 

 

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 私は、息を呑んだ。

 「下書き」に表示されるはずの「1231」という数字が、
 「11」になっている。

 頭が真っ白になる。けれど、指だけは冷静に、その下書きフォルダを開いていた。

 

 

 

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件名










 

 

 

 その11の「下書き」に本文はなかった。ゴミ箱を見ても「空」だった。肝が冷える。背に汗が伝う。動悸が止まらない。喉はからからになり、吐き気さえ催した。

 創作物のメモをすべて「盗まれた」。こんなことがあってたまるか。そう思って、せめて復旧してもらおうとフリーメールの「問い合わせ」を開こうとしたとき。

 

 

 

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 ログアウトされた。

 さらに、ログインのパスワードを入れても、

 

 

 

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 入れない。

 こんなことが、起きうるのか。
 私はとうとう我慢できず、トイレへと駆け込んで胃液を吐き出す。

 何が起きたのか分からない。まさか、なぜ自分がこんな被害に。なぜ、どうして。私だけ。

 


 後日、私の知人が、私の「創作物メモ」に記していた内容と酷似した作品を発表した。

 

 

 

 「自分や家族、恋人の生年月日とか、簡単な文字列をパスワードにしてはいけないよ。」

 「だって、そんなもの、簡単に突破できるんだから。」

 「それにしても、いい創作脳をお持ちだね。」

 「大丈夫、大丈夫。全部、僕が、上手に世間へ発表するから。安心して、『これからも』創作物メモ、書いてよ。」

 「もちろん、これまでどおり、『誰かの生年月日』でお願いするよ」

 「まあ、今なんて、簡単にパスワードを入力させることもできるから、どれだけ複雑にしても、意味ないんだけどね(笑)」

 

 

 パスワードの設定・管理には、十分注意しましょう。


6Apr2020
初瀬川

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