伝伝即飽

私の中で話題に!(自分語り9割/まとめ1割)

【小話】ヒガンバナ

趣味で書いてる小説。再掲。

 

ヒガンバナ

 彼岸花の言い伝えを知っている? 彼岸花は、人の血を吸うから、真っ赤な美しい花びらを開かせるの。一年のうち、二回。お彼岸の時期に、必ず、暑くても寒くても、開花させるのよ。どんなに異常な気象でも、必ず必ず、咲かせるの。

 かつて私が生きていたころ、こんな出来事が起きました。彼岸花が咲いている山のふもとで、一人の稚児が泣いていたの。その子は、大事に飼っていた猫が死んでしまったことを悲しんで、泣いていたの。だから、私はその稚児に近寄って、大丈夫よ、と励ました。猫は、あなたに大事にされて、嬉しかったはずよ。たくさん愛してもらったから、幸せだったはずよ。
 けれど、稚児は首を横に振った。猫を守ってあげられなかった。ぼくのせいで死んじゃった、と。稚児には年の近いおともだちが居たの。でも、とても意地悪な子だったから、ほかの子を蔑んだり、抵抗できない小動物をいじめたりしていたわ。猫もまた、その被害者だったの。稚児が大事にしていた猫を、そのおともだちがひどく扱った。しまいに動かなくなった猫を見て、そのおともだちは、笑ったの。
 稚児のそばから私は離れ、手に鍬を持ったわ。明確な殺意を宿して、私は里へと戻ったの。稚児のおともだちを呼び出して、彼岸花が咲いている場所までおびきよせて、そして一息に

 もちろん私がしたことは大罪だったわ。すぐに大人たちに知れ渡り、咎人として罵られ、生きたまま地面に埋められた。その様子を私は『上から』眺めたわ。不思議な心地だったけれど、悪くはない感覚。
 でもね、この話には続きがあるの。私が復讐を遂げたのに、稚児はちっとも嬉しそうじゃあないの。その後もずーっとずーっと塞ぎ込んでしまって、ある日、彼岸の季節に、その子もまた、死んじゃった。彼岸花が咲く場所で。かつて私がおともだちに手をかけた場所で。私が埋められている場所で。首を掻ききった稚児もまた、死んじゃった。

 彼岸花は悲しいだけのお花ではないのよ。その花言葉には、「また会いましょう」という意味もある。少しだけ不気味な様相をしているので、良くない逸話が多くあるけれど、彼岸の季節に必ず咲く、とっても律儀な花なのだから、悪いものなはずがないの。

 私は今もこうして、彼岸花の傍にいる。たくさんの生き物の息吹を感じながら、久遠に待ち続けているわ。もう一度だけ、あの稚児に会いたい。あの時、あなたは悪くはないと、そう言えなかったから。猫の件だけじゃなくて、おともだちのことも、私のことも。すべて自分が悪いと、死の間際までずーっと、うわ言のように言っていたから。

 もうじき彼岸の時期が来る。たくさんの生き物の魂を吸って、再び彼岸の花が咲く。そのときにはどうかまたもう一度、今度はあなたも、ここにいらっしゃい。


25Mar2019

 

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